2018年2月、奈良県橿原市に県内一高いビル「ミグランス」が開業しました。その最上階に設置された屋上デッキからは耳成山、畝傍山、香久山の大和三山、そして夕日が眺められます。
ミグランスが立つのは奈良盆地南部エリアの要衝である大和八木駅前。低層4フロアが橿原市役所分庁舎、高層6フロアがカンデオホテルズ奈良橿原となっています。庁舎+ホテルの構成は全国初だとか。
橿原市役所分庁舎のフロア案内。窓口サービスを集約したほか、交流スペースやコンベンションルームも設けられました。
今回のお目当ては展望デッキ・展望テラスなので早速10階へ。
10階展望デッキに到着しました。開放時間は朝9時から夜9時半まで。平日だけでなく土日も入場可となっています。素っ気ない空間ですが、窓が大きいので景色を楽しむには最適。北を除く3つの方角に開けているので、それぞれに眺めを紹介していきます。
東
まずは東の方角
まっさきに目に飛び込んでくるのが耳成山です。大和三山のうち一番北側にある山で標高は約139m。古今集では
耳成の山のくちなし得てしがなおもひの色のしたぞめにせむ
と詠まれました。麓の公園は桜の名所でもあります。
その遥か後方にあるのが三輪山。山そのものが御神体とされています。大神神社の巨大な大鳥居がシンボルですが、残念ながら耳成山に被っていて見えません。
洋風建築+瓦屋根の帝冠様式をみせるのは畝傍高校の校舎。昭和8年の完成でいまだ現役として使われます。
大和三山のうち、南東にある香久山は最も遠く、また、目立たない形をしているので見逃しに注意。地味な存在に思えてしまいますが和歌集での登場率はおそらくナンバーワンでしょう。
春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山
はあまりに有名。藤原京跡に並ぶ赤い柱も遠望できますが肉眼ではちょっと厳しいかも。
南
続いては南の眺望。主役は畝傍山です。標高199mは大和三山の中では最高峰
思ひ余りいたもすべなみ玉たすき畝傍の山に我は標結う(万葉集)
畝傍山の脇を走り抜ける近鉄電車。橿原神宮前を経て吉野方面に向かう路線です。
畝傍山の麓には神武天皇が眠るとされる畝傍山東北陵。そして橿原神宮があります。
その向こうは山、山、山。奈良県の人口は北西部にある奈良盆地(大和平野)に集中。吉野以南には行楽以外でまず行かない。なので、県民であっても十津川村への訪問0回というのは珍しくありません。
赤い建物は橿原市役所本庁舎。奥の白い建物は奈良県立医科大学+附属病院です。2つの間には素敵な廃墟ビル「プラザ松本」があったのですが少し前に解体されました。
JR畝傍駅。小さな木造駅舎ですが貴賓室を備えます。天皇がこの駅を起点に橿原神宮へ参拝していた頃の名残。
西
西の見どころは何と言っても夕日。大阪府と奈良県との県境になっている山々に向かって沈んでいきます。
金剛山をスタート。葛城山を経て、二上山(写真)に至るダイヤモンドトレールという縦走路が人気だとか。
大和八木駅を発して大阪方面に向かう近鉄電車を眺めます。ちょうど写真中央、北側への分岐がチラッと見えますがこれは大和西大寺・京都⇔伊勢志摩・名古屋を特急で繋ぐための新ノ口連絡線。時間を調整すれば「しまかぜ」に出会えます。
瓦屋根が密集するエリアは今井町。「大和の金は今井に七分」と謳われた豪商のまちです。国の重要文化財がなんと9棟も。
三和澱粉工業の工場も周辺シンボルのひとつかな。夕日を受けて煙がオレンジに染まります。
そして日没。見守ったのは私を含めて4人だけでした。
開業2日目の訪問だったんですが人は多くは無かったです。眺望以外は特に何もない空間なので滞在時間は平均3~5分程度といったところでしょうか。
ネオンは少ないので日没後の夜景は期待しないほうがイイです。訪問するなら日中がオススメ。特に歴史好きならロマンを感じられるスポットだと思います。
せっかくなのでミグランスをちょっと紹介。
屋外に出られる10階展望テラス(この日は立ち入り不可)
1階ロビーと交流スペース。木材を多用したインテリアです。
オープンエアの大きな吹き抜け空間の右にホテル、左に分庁舎入り口があります。
無電柱化された歩道に面してレストランが入居。暖かくなればテラス席も賑わうでしょう。
最後は夜のミグランス全景。今回訪問した展望デッキは最上階左の明るい部分。面積としてはごく一部なのがわかると思います。残りはホテルエリアで、中央はその展望浴場です。当初計画では誰でも入浴できるはずでしたが当面はホテル宿泊客向けとして運用されることになりました。早期の開放を期待したいですね。