近代建築・古建築

「綿の王」谷口房蔵が建てた旧谷口家吉見別邸(田尻歴史館)

五大紡績会社の一つ、大阪合同紡績を率い「綿の国から生まれた綿の王」とも称された谷口房蔵。日本綿業倶楽部の初代会長ともなった彼が、郷里の大阪府田尻町に建てたのが旧谷口家吉見別邸、いまの田尻歴史館です。

関西国際空港を対岸に望む海のそば。1000坪もの敷地に洋館、和館、土蔵、茶室、庭園が配されています。

敷地入ってすぐ、青海波のアプローチ!波乗り気分で玄関に向かいます。

といっても入館はかなわず。私が訪れた2019年時点で耐震工事のため長期休館中でした。

薬医門の隙間からなんとか覗き見た洋館は、煉瓦造2階建て。外装に磁器タイルが使われています。かつては大阪合同紡績の巨大工場が隣にあり、迎賓館的な役割も果たしました。

設計者はハッキリしておらず、過去には安井武雄、辰野片岡建築事務所の名が挙がっていました。近年の研究では後者で勤務経験があり、大阪合同紡績の設計技師となった和田貞次郎説が有力となっています。

建物の歴史は次の通り。谷口家の手を離れたあとも、地域のシンボルとして大切に守られてきました。

大正12年 谷口房蔵氏の別邸として完成(棟札は大正11年)
昭和19年 大阪機工が取得
昭和43年 辻野常彦氏(泉南市商工会、大阪府商工会連合会の会長経験者)が取得
平成4年 田尻町が取得
平成5年 田尻歴史館が開館(翌年に関西国際空港が開港)
平成8年 国登録有形文化財に登録
平成17年 大阪府指定有形文化財に指定(国登録文化財抹消)
平成19年 近代化産業遺産に認定
平成28年 耐震工事のため休館
令和4年6月 耐震工事完了予定

東側から敷地内を見ることができました。広大な庭に面して、花をモチーフにしたステンドグラスがあります。

ステンドグラスは建物各所に散りばめられていて「綿の王」らしく綿花の図柄もあるとか。一番の見どころは2階踊り場だそう(玄関横の縦長窓でしょうか)

それにしても、このサンルームっぽい空間いいですね。休館前と同じようにカフェ営業を期待したいところです。

和館は日常生活の場。洋館との接続部分に屋久杉の天井板を使うなど、こちらも凝った造りだといいます。

南面。三角の換気口をもつ平屋は茶室(設計:三代目木津宗泉)です。

頂部にレリーフが付いた切り妻部分。上から正面(北面)、東面、西面です。壁と屋根が淡い色合いなので、ちょっと唐突な印象を覚えました。


画像出典:田尻町

耐震工事は2020年から本格化。田尻町はその進捗状況を「田尻歴史館耐震補強等保存修理工事だより」として発信していて、これはそのうちの「2020年 水無月号」にあった写真。屋根を取り払い、切り妻部分がむき出しになっています。外観からは想像つかないですが、ちゃんと煉瓦造ですね。

現場見学会が定期的に開催されるようで、次回は2020年10月3日と4日を予定。工事完了は2022年6月を見込みます。