四天王寺を守ったレトロな消防署、天王寺消防署元町出張所

四天王寺を火災から守るかのように、その敷地内に立っていた天王寺消防署元町出張所が取り壊されました。在りし日の姿を偲びます。

庁舎は昭和5年、当時まだ珍しかった鉄筋コンクリート造で竣工。四天王寺の築地塀に刻まれた5本の定規筋を意匠に取り入れるなど、かなりモダンな消防署でした。

左右の柱はデザインの趣向が異なります。消防車との新旧融合が良いですね。左から小型ポンプ車のST91、ST107、救助支援車のSR5が並んでいました。

消防ポンプ車(ベンツ製)の導入は大阪府が全国で最も早く明治44年。国産の消防ポンプ車が出回り始めるのは昭和14年なので、それまでは外国製のポンプ車が配備されていたと思われます。明治大正期に活躍した消防機器(蒸気ポンプ、ガソリンポンプ)もまだあったかもしれません。

元町出張所の特徴のひとつが、国道25号線側だけでなく、裏手の境内側にも出入り口を設けていた点。四天王寺に火の手が上がった際、いち早く駆けつけることができました。

朝の点検でしょうか、珍しく裏手側シャッターが開いているのに出くわしたのは幸運でした。

それにしても不思議な形です

東側面のウインチと水場

土地は四天王寺からの無償貸与だったそう。創建以来、五重塔は何度も焼失しているので四天王寺側も備えを万全にしたかったのかもしれません。元町出張所の開設後は、昭和9年の室戸台風で五重塔が倒壊、昭和15年に再建を果たすも、昭和20年の大阪大空襲で五重塔を含む大半の建物が焼けてしまいました。

消火の優先順位はさすがに人家>四天王寺?いずれにせよ空襲には太刀打ちできません。四天王寺や天王寺消防署が燃え落ちたなか、元町出張所は生き残りました。

2021年8月末、庁舎は役目を終えました。同じ場所での建替えが計画されていましたが、国の史跡ということがネックになり断念。新・元町出張所は近隣に移り、ボーダーの意匠を引き継ぎました。

四天王寺五重塔と天王寺消防署元町出張所。記憶と写真の中にしかない光景になってしまいました。