加古川図書館は1935(昭和10)年、加古川町公会堂として竣工し、1974年からおよそ50年近く図書館として歩んできました。その閉館が間近に迫っています。
建物は3階建てに見えて実は2階建て。ステンドグラスのアーチ、幾何学的な意匠が目をひきます。
設計した置塩章(おしおあきら)は陸軍省、兵庫県庁で腕を奮った建築家で、独立後に公会堂を手がけました。ほかに宮崎県庁舎や神戸の旧国立生糸検査所、旧大阪砲兵工廠化学分析場といった作品が現在も残ります。
先に挙げた作品からわかるように置塩章はゴシックを好みました。建物を彩る多様なデザインにそれが現れています。
頂部です。市章は1970年制定なので後付け。加古川とその両岸を図像化しています。
この建物で一番有名なのが三島由紀夫のエピソードでしょう。
三島は徴兵逃れのため東京からわざわざ加古川に検査を受けにきました。米俵が上手く持ち上がらなかったのは狙い通りとも言えますが、彼のコンプレックスを刺激する出来事であった事は間違いありません。ちょうど松の木あたりで検査が行われたようです。
金剛寺浦公園の2本のクスノキの間から見える裏面はやけに質素。こちら側にも建物があったのでしょうか。
この辺りはかつて郡役所、町役場が並ぶ行政の中心エリアで、かなりの賑わいだったとか。
スクラッチタイルが貼られた玄関廻り。
公会堂時代の受付?
外観に比べると館内の意匠は控えめ。転用時に大改修されたので公会堂時代の名残は1階ロビー、階段、2階の新聞閲覧室にほぼ限られます(バックヤード除く)。図書室は撮影不可ですが1、2階とも特筆すべき点はありませんでした。
階段とその途中の窓からの景色
階段を上ったところが新聞閲覧室(旧喫煙室)。この建物のハイライトです。公会堂時代、2階には700人収容の大会堂もありました。
とても優しい色合い。
巨大なステンドグラスのアーチを前に、おじさんが新聞をペラペラめくっていたのが印象的でした。
6月23日がこの建物での図書館ラストデー。当面は書庫に活用されるとの事ですが「耐震改修して使う意向はない」「解体も選択肢」と市長が明言するほどなので間違いなく前途多難。
ステンドグラスが外からしか見られない、ましてや無くなるなんて事がないよう何とか活用法を見出して欲しいものです。
デザインが微妙に異なる5ヶ所9本の門柱もイイ! pic.twitter.com/h4WW1hxA7i
— shoken@ビル景 (@bbbuilding100) June 16, 2021