伸び縮みするメリヤスの特性から、莫大にも小にもなるという意味で“莫大小”なんて難読漢字が充てられたわけですが、大阪の近代建築マニアは全員読めます。それはこの莫大小会館のおかげ。
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莫大小会館があるのは大阪市福島区。昭和4年(1929年)、大阪輸出莫大小工業組合の事務所として宗兵蔵(宗建築事務所)の設計で完成したもので、昭和12年までに西から東に向かって増築。戦後すぐ4階を付け足して、現在のファサードになりました。
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第1期完成時にあったのは西階段と中央階段のみ。そこから左が増築部です。
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中央階段はそんな歴史が刻まれる建物最大のチャームポイント。既存部と増築部をつなぐため、壁をぶち抜き、階段の途中から階段を分岐させるというアクロバティックな手法がとられました。ツギハギ感が強いのはそのため。つまり、写真2枚目は元・外壁です。
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連結部2階は単純なアーチ、3階は尖頭アーチと変化をもたせているのも面白い。
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続いての西階段は薄暗く重厚。竣工時の姿を最もよく残していると思われます。唯一3階止まりで、ほぼ上下移動しかできない独立した区画になっています。
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踊り場を描いた絵が踊り場に置かれるという遊び心。鏡に女性が映っているようでドキッとさせられます。中3階に入るアトリエの作品です。
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莫大小会館は、業界関連のテナントが退去したあとも、ギャラリーやカフェ、建築設計事務所などが入る個性派ビルとして時代を生き抜いてきました。
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東階段は、上り始めすぐに現れる扉がたまりません。
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木のサッシ、星が入ったガラス。
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ちなみに扉閉鎖時。ビル休館日であっても、1階及び地下テナントが営業するための工夫だったのでしょうか。
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明るさは3階段のうち一番。手摺壁が角ばっているのはココだけ。
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そんな莫大小会館も2022年7月31日をもって閉館。存続の道を探っていたところ、耐震性不足が想定以上だったと聞きました。曽根崎川の流路跡に立っているため地盤が軟弱で、建物が前面に向かってやや傾いているとか。基礎は松杭らしいです。
近代建築マニアの「莫大小」読みの正答率も、これから下がっていくだろうなと。閉館前日にお別れ訪問をしてきたのですが、多くの方が名残を惜しんでいました。
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