現代建築

増田友也巡礼 比叡山の横川定光院は深山幽谷にたたずむ

比叡山延暦寺は主に3つのエリアから成っています。根本中堂がある東塔、延暦寺最古の建築が残る西塔、横川中堂を核とする横川。

そのうちの横川の定光院に増田友也が建築を残したようなのですが、ネット情報も無ければ、寺院の公式HPも無し。ただ1枚見つけたそれっぽい写真(非建築系の個人ブログ)に望みをかけ、現地を訪ねてみることにしました。

ただ、この聖地巡礼路。お金と時間が結構かかります。

  • 叡山電鉄 出町柳駅-八瀬比叡山口駅:所要時間14分 270円
  • 叡山ケーブル ケーブル八瀬駅-ケーブル比叡駅:所要時間9分 550円
  • 叡山ロープウェイ ロープ比叡駅-比叡山頂駅:所要時間3分 350円
  • 比叡山内シャトルバス 比叡山頂-横川:所要時間20分 800円
  • 延暦寺 東塔・西塔・横川共通券 1000円

私はフリーパス3500円を購入し、帰りは滋賀県側にケーブルカーで下りることに。起点となる出町柳駅を8時40分に出発、4つの交通機関を乗り継ぎ、ようやく終点横川に着いた頃には12時半になっていました(延暦寺抜きでも寄り道が忙しい)

エリア案内図の右隅に定光院を発見!周回路から脇道を入った場所にあるようです。

エリアの核である横川中堂は淀君時代の建物を1971年、鉄筋コンクリート造で再現。横川はほか2エリアと比べると閑散としていて、横川中堂も独占状態でした。

「定光院 日蓮上人舊跡 三丁餘」

元三大師堂の先で、道が二手に分かれます。左が周回路。右がお目当ての定光院。

で、ここからが苦行で、まさかのグネグネ下り道。案内図ではすぐそこだったのになぁ…。さすが聖地です。簡単にはたどり着けません。

急坂を5分以上下り続けて姿を現した定光院は、深山幽谷の雰囲気に包まれていました。修行の身にあった日蓮が起居した地なのだそう。境内は奥に長く、増田建築があるのか一見わからないのも期待が高まります。(解体済みだったら膝から崩れ落ちる)

あ、あれは!

出た!

このコンクリートの造形、まさに増田友也です。

寺院であることを意識したのか陸屋根ではなく方形屋根になっています。建物内部は比較的オーソドックスな造りで、大きな和室(会合の場?)が中央を占め、西側に日蓮上人像を祀る祭壇が置かれます。

階段が東寄りに付くのは、祭壇から距離をとるためでしょうか。

増田友也作品である確証がもう少し欲しいのですが、何かを聞こうにも、誰もいません。昨年、京大で開催された増田友也展に詳しい説明があったのかもしれませんが、全く記憶にないのが残念なところ。

一縷の望みをかけ、這いつくばるようにして石板の裏をチラリ。定光院の来歴が刻んであり、そのうちの一文に目を奪われました。

「昭和四十五年 一九七〇 十月、宗祖御生誕七百五十年を記念として、定光院護持会法華クラブ小島愛之助報恩感謝し祖師堂(現建築物)を建立す」

法華クラブ小島愛之助!!京都を訪れる法華宗信徒のために作られたホテルで、京都本店の建て替えを1974年、増田友也の設計で行っています。京都大学増田研究室の門下生が組織した設計事務所ゲンプランも、いくつか法華クラブのホテルを手がけました。

昭和四十五年という竣工年も合致。これで、定光院と増田友也が繋がりました。久留米の千栄寺(設計:菊竹清訓)で、石橋正二郎の名前を見つけた時と似た興奮です。

そして、裏の崖地です。最後まで驚きを用意してくれますね、この建物は。

すげー。

帰りはちょっとした登山。聖地巡礼は苦労が多いほど、満足度が高いものです。


プロフィール

超高層ビルから茅葺民家まで色々と。建物のあるイイ風景を求めて都市、町、村を巡ります。