浮遊する名建築。寒河江市役所と東光園が登録有形文化財に ①

2017年7月21日、新たに登録有形文化財に指定される244の建造物が公表されました。おっ!と目が止まったのが寒河江市役所庁舎と東光園本館の2棟。戦後モダニズムの傑作に分類される名建築です。

山形盆地に位置する寒河江市庁舎。1967年に完成。若かりし頃の黒川紀章の作品です。

東光園は鳥取県の皆生温泉にある観光旅館で、登録対象となった本館は1964年、菊竹清訓の設計によって完成しました。この2つの建築には大きな共通点があります。それは上層階が浮遊していること。柱で下から支えるのではなく、上から上層階を吊っているのです。

それぞれの建築を順番に見ていきます。まずは寒河江市役所。登録有形文化財の一覧表の説明には「建築家黒川紀章の初期の代表作。3・4階を張り出す構成で,スロープで上がる二階に吹抜けの市民ホール,一階に議場など,空間構成も巧みな戦後モダニズム庁舎。 」とあります。張り出している建物って大好き。カッコいい。

3階と4階が吊り構造で、赤い点々は建物を吊った先の留め具です。吊るって大丈夫なの?といまだに思ってしまいますが、要は横浜ベイブリッジとかの斜張橋と似た原理なのでしょうか。

印象的な玄関の取っ手。

中に入ると、大きな吹き抜け空間があり、強烈な存在感を放つオブジェ「生誕」が浮かびます。

四方八方に手足を伸ばした生命感みなぎる造形。天井からは自然光が降り注ぎます。

制作者は岡本太郎!(←行くまで知らなかった…)。ちなみにさっきの玄関の取っ手も岡本太郎作でした。オブジェの真下の石には黒川紀章のほか、施工者や、椅子などを納入した天童木工の名前が刻まれます。そして、なぜか高島屋。

あらためて2階の市民ロビーです。休日なのに開庁していたのはラッキーでした。ところで、オブジェに光が灯っているのがわかりますか。職員さんが気をきかせて点けてくれたんです。

職員さんが庁舎に誇りをもっていらっしゃるのを嬉しく思う一方、少し残念だったのは前面にあった池が埋め立てられていたこと。雨水の受け口もちょっと素っ気なくなっていました。

山形の長閑な町を舞台にした黒川紀章、岡本太郎の2大スターの競演。しびれました。寒河江市民、そして職員さんが文化財登録を受けて、より庁舎への思いを強くしてくれればと期待します。

アクセス JR奥羽本線山形駅から左沢線に乗り換えて6駅目の寒河江駅で下車。そこから歩いて15分の距離に寒河江市役所は立っています。ちなみに電車はおおよそ1時間に1本なので注意が必要。運転席の窓からは出羽山地の雄大な景色が楽しめます。

東光園も一緒に書いちゃおうと思いましたが、長くなりそうなので、次の記事で。

浮遊する名建築。寒河江市役所と東光園が登録有形文化財に ②
祝!戦後モダニズム建築登録有形文化財登録答申!前回の寒河江市役所庁舎に続く第2弾記事。今回とりあげるのは鳥取県米子市の皆生温泉にある東光園本館です。↓前回記事東光園は昭和初期に開業した観光旅館です。文化財の指定対象となった本館はオリンピック...
タイトルとURLをコピーしました