日本に残るフランク・ロイド・ライト4建築。ヨドコウ迎賓館は世界遺産候補に!

近代建築の三大巨匠のひとりに数えられるフランク・ロイド・ライト。2019年7月、代表作である落水荘、グッゲンハイム美術館など8つの建築群が世界文化遺産に登録されることが決まりました。

実現した400を超える作品のうち日本に現存するのは4つ。たった4つ…と思うなかれ。北米以外で残るのは日本のみ。2棟は重要文化財、1棟は登録有形文化財でお手軽に見学可能。

日本はライト建築を体感するのに非常に恵まれた環境にあるのです。

帝国ホテル中央玄関

マヤ文明を思わせる濃い装飾、幾何学的模様、深い軒。

ライト建築の魅力に溢れた帝国ホテルは彼が手がけたものの中でも屈指の規模。とあるF.L.ライト本の序文で「並はずれたものでありながら取り壊されてしまった建築物」と紹介されます。

明治村(犬山市)に移築されたのは一部のみですがそれでも圧倒的な迫力。大谷石の細かな彫刻など、妥協を許さないライトの熱情を存分に感じることができます。結局は大幅な予算オーバーを招いて途中解任…となってしまうのですが。

それまでの洋風建築と一線を画した造りが衝撃だったのか以後、ライト風、ライト式などと呼ばれる作風の建物が日本各地に出現することになります。これから後に紹介する3建築も、帝国ホテル設計のためライトが来日したからこそ実現した建物です。

■所在地:明治村(愛知県犬山市字内山1)

■見学料金:大人1700円(入村料)

公式HP

林愛作邸(電通八星苑)

帝国ホテルの新館建設にあたってライトを招聘したのが当時のホテル支配人、林愛作。ニューヨークでの美術関係の仕事がきっかけでライトと知り合いました。※ライトは浮世絵収集家としても知られます。

駒沢オリンピック公園の隣にあって、今は電通の厚生施設。ライトの代名詞でもあるプレーリースタイルの特徴を見せますが、一部を除いて大幅に改装されているとのこと。残念ながら基本的に見学不可です。

林愛作は帝国ホテル・ライト館の建設中に解任させられます。そんな彼が7年後、理想のリゾートホテルとして完成させたのが甲子園ホテル(現・甲子園会館)。ライトの高弟である遠藤新を起用し、ライト風にしたことからも彼がいかにライト建築に魅せられていたかが伝わってきます。

■所在地:東京都世田谷区駒沢1丁目1-30

■見学不可

自由学園明日館

東京にあるもう一つのライト建築です。こちらは見学可。国重要文化財で、前2作品と異なり、ほぼ完全な姿で残っている点でも貴重です。

学校を創立した羽仁吉一・もと子夫妻の友人に遠藤新がいて、その繋がりでライトに設計が依頼されました。真の自由人を育てたいとする夫妻の考えに共鳴し、積極的に仕事を引き受けたといいます。

校舎として使われたのは10年ちょっと。その後も大切に守られ“動態保存”のコンセプトのもと結婚式やイベントなどに広く用いられています。

ちなみに講堂は遠藤新。その隣、羽仁夫妻が創業した婦人之友社本社は遠藤新の息子でありライト晩年の弟子でもあった遠藤楽の設計。ライト色が日本一濃いエリアといえるでしょう。

■所在地:東京都豊島区西池袋2丁目31-3

■見学料金:400円ほか

公式HP

山邑邸(ヨドコウ迎賓館)

豪邸が軒を連ねる芦屋。山邑邸はその中心部を流れる芦屋川の先に屹立します。造り酒屋・櫻正宗の当主山邑太左衛門国の別邸として立てられました。

建物は4階建てですが斜面に沿って建てられているため、どこを切り取っても1〜2階建てになるよう工夫されています。屋上バルコニーからの眺望も見どころ。「自然との調和」を旨としたライトの考えが滲み出た建築です。

山邑家→天木繁二郎→淀川製鋼所と所有者が変わり、その用途も居宅、事務所、進駐軍の社交場、社長公邸、貸家、独身寮と様々に移り変わりました。

取り壊してマンションにする計画もありましたが保存運動で回避。その後、大正建築として初めて国の重要文化財の指定を受けます。

フランク・ロイド・ライトの建築群が世界文化遺産に登録されるにあたっては、日本の4建築で唯一、将来の追加登録候補のひとつに選ばれました。

■所在地:兵庫県芦屋市山手町3-10

■見学料金:大人500円

公式HP

この呟きの数ヶ月後、フランク・ロイド・ライト作品の世界文化遺産への登録が決まりました。以下は対象となった本場アメリカの8作品。いつか「ヨドコウ迎賓館」の名がこれら名建築と並ぶ日がやって来ます。

■グッゲンハイム美術館
■落水荘(カウフマン邸)
■ユニティー・テンプル
■タリアセン
■タリアセン・ウエスト
■ロビー邸
■ホリーホック邸
■ジェイコブス邸

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