西武大津店 菊竹清訓の階段美と吹き抜け空間

菊竹清訓が設計した西武大津店(西武大津ショッピングセンター)の見どころは何といっても外階段!

建物の東西それぞれの側面に、外階段が付いています。

千日デパート火災、大洋デパート火災、西武高槻ショッピングセンター火災

昭和47~48年に立て続けに起こった百貨店火災への対策が考えられていた時代に、西武大津店は計画されました。外階段は避難用として生まれたのです。

この建築がユニークなのは、そんな避難用階段をデザインの主役にもってきたこと。強烈なインパクトを残す造形は、安心感を視覚的にアピールする狙いがあったのかもしれません。

設計者の菊竹清訓に関しては以前、鳥取の東光園を記事にしています。

オーバースペック気味な外階段にお金と労力を注ぎ、過剰なまでの安全性を確保したのは、西武グループ創業者、堤康次郎の出身地が滋賀県であることも理由の一つかもしれません。

各フロアから出られる棚田状のテラスはウィンドウショッピングとイベントを楽しめる場だったそう。災害時にはテラスを上下につなぐ外階段が避難路になります。

若者向けのパンダグラフが呼ばれる建物が低層部で接続していましたが、今はもうありません。

西武大津店は6~7階の吹き抜け空間にも特徴があります。6階催事コーナーを囲んで見下ろすように、7階飲食店が並んでいます。

ペットショップになっている三角のスペースは温室「バードパラダイス」の名残。400羽もの鳥が樹木の間を飛び回り、水も流れる空間だったとか。

よほど思い出に残る場所だったのでしょう。Twitterで西武大津店のことを呟くと、バードパラダイスに関する返信が必ずきます。

風船の自動販売機が隣にあって、天井にはいつも風船がプカプカ…なんて話も。

惜しくも2020年8月31日に閉館してしまう西武大津店。7階では「44年のあゆみ展」が開催中で、昔の写真やポスター、折込チラシなどが展示されています。

~西武大津店従業員に伝わる話~
「6~7階の吹き抜けは、琵琶湖の形を模していて、真中の通路はびわ湖大橋である。真偽のほどは不明ですが確かにそんな形?」

吹き抜けは琵琶湖の形で、開店当初はネッシー推し。

それを知った今、天井の不思議な裂け目が琵琶湖を泳ぐネッシーに見えてしかたありません。

これまで述べてきたように、火災への備えに重点を置いた建築。

琵琶湖&水をつかさどる竜(首長竜)を最上階に据えることで、防火のまじないに…だったら面白いなと。

閉店後、建物は解体。もう生まれることはないだろう稀代の階段建築でした。

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