2019年12月に開業予定のホテルロイヤルクラシック大阪。かつての新歌舞伎座の外観を一部再現したいわゆる「腰巻建築」です。あの個性派をどんな風に取り込んだのか、その出来栄えを見てきました。
まずは新歌舞伎座の解体前の姿
「桃山風」をキーワードに二条城、名古屋城を参考にデザインされました。設計は村野藤吾。連続する唐破風が大きな特徴で、1958年の完成から2015年に解体されるまで難波のシンボルの一つでした。※閉館は2009年
そして、ホテルロイヤルクラシック大阪。
設計は隈研吾。かんこんそーさい♪ ベルコ~♪のCMでお馴染みのベルコが事業主なので、ホテル主体ながらブライダルにも力を入れています。
2019年1月、低層部の覆いが外れてほぼ全貌を確認できるようになりました。第一印象は大いにアリ。評価の理由は新歌舞伎座の再現性の高さ。
もう完っ璧!
最大の見所である唐破風。数はもちろん微妙なカーブをしっかり再現。その上に載ってる装飾は傾斜する角度まで同じ。柱、垂木、高欄も手抜きなし。
これ保存じゃなくて再現です。一度完全に解体してるなんて信じられません。
一致具合に惚れ惚れ。
隈研吾氏の「腰巻建築」といえばまず東京のGINZA KABUKIZA(歌舞伎座タワー+歌舞伎座)が浮かびますが、こちらは高層ビルを後方に載せ、一つの建物という印象を薄くしています。
一方のホテルロイヤルクラシック大阪。高層部がオーバーハングして被さります。土地の制約という面もありますが、より挑戦したデザインといえるかもしれません。
高層部の破風。小さな遊び心です。隈さんはホテル内装やチャペルでらしさを発揮。木材を多用した完成イメージが出ています。
もちろん以前と大きく変わった点もあります。千鳥破風の下の櫓、辻晉堂デザインの鬼瓦が無くなり、4つあった千鳥破風も正面のみになりました。千鳥破風の中はチャペルです。
↓鬼瓦は地上に移設されました
屋根色も違いますが、これは銅板屋根の特性。時間とともに錆を帯び、いずれは旧屋根と同じ色になります。(その変色過程も楽しめそう)
側面は思い切って簡略化。平瓦の壁は再現なし。
濃い正面。徐々に薄くなる側面。簡素な裏面。これは新旧どちらもです。
新歌舞伎座跡地はもっと早い段階で外資系の手によって再開発されるはずでした。それが、リーマンショックによる冷え込み、裏手飲み屋の立ち退き交渉などが長引いているうちにインバウンドが沸騰。外国人ウケする外観を再現しようという判断に至ったのかもしれません。
完成イメージが出たときは「無理に再現しなくとも…」と少し否定的でしたが、実物を目にすると嬉しさと興奮と懐かしみを感じるんだから不思議なものです。 pic.twitter.com/HI4dZcVihp
— shoken@ビル景 (@bbbuilding100) 2019年1月18日
もちろん元の形で残ってくれるのが最良ですが世の中はなかなかに厳しい…。再現クオリティが高ければそれでOKなのか?!という議論もあるでしょう。
それでも忌避感が減ってきたのはしっかり手間暇かけたダイビル本館や大丸心斎橋店新本館、そして新歌舞伎座のおかげ。
あとのお楽しみは夜!
ライトアップの美しさは新歌舞伎座時代からの折り紙付きです。
【追記】
この数日後にライトアップが始まりました。