残念ながら解体が決まってしまった中野サンプラザ。その建設当時のイラストを見る機会があったのですが、あまりに素晴らしかったのでビルへの惜別の想いも込めてご紹介。
日本最大級の一般参加型建築イベントであるイケフェス大阪2018。今年の日建設計大阪オフィスの展示は、お抱えイラストレーター陣が描いたイメージパースやペン画などでした。
チームで描く枚数は年間500枚以上で、プレゼン資料等に用いられるのだそう。見慣れたビルもイラスト時点ではまだ世に存在しない。そう考えると何だか新鮮に映ります。
日建設計大阪オフィスの展示にあった幻の7階建て住友銀行本店。
関東大震災の影響を受け、2階減で建設せざるを得なかった長谷部鋭吉の無念を、後輩たちがイラスト(1960年作画)で晴らしていました。 pic.twitter.com/buioEni5w9— shoken@ビル景 (@bbbuilding100) 2018年11月1日
当日は大興奮。あまりの情報量に圧倒されっぱなしでした。それにしても日本最大の設計事務所で、手書きのアナログ文化が受け継がれていたのが驚きです。
壁一面に飾られたイラストの数々。その中で、異彩を放つ1枚がありました。パッと見では未来の建築のよう。タイトルを確認し、ようやく中野サンプラザだと気付きました。
竣工の前年1972年の作画です。
中野サンプラザ(旧正式名称:全国勤労青少年会館)
中野駅北口に立つ白い三角ビル。日建設計の林昌二氏らを中心に設計されました。
宇宙船を感じさせるメカメカしい断面図。これだけでも「最高!」となるのですが、見所はそれだけじゃありません。人々が実に生き生きと描かれているんです。
まずはコンサート会場にズームアップ。アイドルらしき女性が宙吊りで歌っています。ここまではまぁ普通の範囲内。このイラストが優れているのは…
裏方の照明係が描かれていること!
どんな魅力を持つ絵なのか、どれだけの熱量が注がれたのか、この一点だけで伝わったかと思います。ビル全部がこの調子。
裏方つながりで中央制御室も紹介。前面モニターに小さく映るのは中野サンプラザの断面。もはや宝探しの域です。
エントランスホールの下の、買い物ゾーンの下の、調理場の下の、トレーニングルーム。
ボーリング場とプールは両方とも現役稼働中ですね。
お次は高層階。ホテル、宴会場などで構成されます。
披露宴の親族控え室。挨拶を交わす二人を、和装のご婦人がチラ見。
屋上庭園ではウエディング写真?を撮影中
会議室の1フロア下、男女がステップを踏んでいます。ダンスの躍動感が線1本で伝わってくるのが凄い(特に左の女性!)
講習会っぽい。右下は何の部屋だろう?
ホテル、コンサートホール、プール、ボーリング場、チャペル、会議室…。色んな機能を詰め込んだ複合施設は今でこそ珍しくありませんが、当時はまだレアな存在。中野サンプラザは先駆例でした。
人々をバラエティ豊かに描き入れる事で、建物のもつ多様な性格を表現したかったのかもしれません。
最後は駐車場。車のデザインに時代を感じますね。
よくよく目を凝らすと1台のボディに小さく「Y MORI」のサインが入っていました。誰を指すのかわかりませんが、この遊び心、きっとイラストの作者さんだと思います。