沖縄・瀬底島へのヒルトン進出が明らかになりました。美しいビーチを望む国内屈指のリゾートホテルになることが見込まれます。
しかし、この地へのホテル計画は今回が初めてではありません。敷地の一角には、かつての夢の残骸が横たわってます。
那覇空港から車で1時間半。沖縄本島北部の本部町から長さ700mの橋を渡った先にあるのが瀬底島です。面積3k㎡ほどの小さな島ですが瀬底ビーチが評判を呼び、夏場には多くの観光客で賑わうようになりました。※航空写真はGoogleMapより
白い砂浜と青のグラデーションが800mにわたって続く瀬底ビーチ。ヒルトンが進出するのはこのビーチに面した場所です。
しかし、このビーチを訪れる観光客が、必ず目にせざるをえない光景があります。
それが長さ400mのコンクリートの塊
建設中のまま打ち捨てられた瀬底ビーチリゾートです。300億円を投じた超高級ホテル(360室)として2009年に完成するはずでしたが、リーマンショックで頓挫。開発会社が経営破綻したため、誰も撤去できず約10年にわたって巨大な骸を晒し続けているのです。
むき出しの鉄筋が突然の建設中止の生々しさを伝えます。既に錆びつき、コンクリートには赤茶色の筋がついてます。
ポコポコ空いた穴は首里城の壁をイメージした意匠ですが、現状では廃墟感をより際立たせているに過ぎません。
建物は瀬底ビーチに沿ってS字を描きます。大規模&建設途中&超高級の3要素が組み合わさった廃墟です。
縮尺を変えて広く俯瞰します。実はこの場所。1980年代にもアパレル大手(←今も大手)がホテル建設を目指しました。敷地面積は65万m2と現在の33万m2の倍近くでの計画でしたがバブル崩壊で泡と消えました。
2度の計画中止を味わった瀬底島でしたが2015年に森トラストが敷地を購入したことで事態が好転。2017年11月、ヒルトンブランドの2ホテル誘致が発表されました。
以下の完成イメージは森トラストのプレスリリースから引用
ヒルトン沖縄瀬底リゾート(仮称)
約300室
2020年開業
ヒルトン・グランド・バケーション
132室
2021年開業
週単位で客室利用の権利を購入するタイムシェア型のリゾート
合わせて約430室でともに全室オーシャンビュー。1部屋に2名宿泊すれば瀬底島の人口を超えますね。
交通アクセスの悪さがネックですが、すぐ近くの本部港では20万トンクラスに対応できる岸壁整備が進行中。中国・台湾発着の大型クルーズ船が2020年度に88回の寄港を予定しています。ホテルの開業はこのスケジュールに合わせたのかもしれません。
建設地はホテル廃墟の隣。(おそらく)かつてゴルフ場として整備しようとしていた土地です。ヒルトン沖縄瀬底リゾートのイメージ図の池は(たぶん)ゴルフ場のそれ。
一方、打ち捨てられた建物に関しては解体の方針が出されました。超高級リゾートホテルを目指した建物が、一度も使われることなく姿を消す。諸行無常です。
小さな島を舞台にした紆余曲折は、ヒルトン進出によって終止符が打たれます。多くの人が魅せられ、夢破れた瀬底ビーチ。2020年には、セレブな方々がパラソルの下でくつろぐ光景が見られるかもしれません。