増田友也は京都大学工学部で教鞭をとるだけでなく、大学にいくつかの建築作品を残しました。それらを紹介します。
①坂記念館
構造学の権威、坂静雄教授の功績を顕彰する施設で、教授自ら構造設計に参加。退官の翌年となる1960年に完成しています。オモテ側の棟は1980年前後の増築で、オリジナルはウラ側の2階建て。覗き見たところ、2層吹き抜けが大部分で、現況は物置のようです。チラッと見えた階段は、鳴門市庁舎を思わせる造形でした。
②学術情報メディアセンター
大型計算機センター計算機室として1968年に完成。こちらは外階段が見どころ。エントランス側の棟は1980年代の増築です。
③総合体育館・付設プール
強烈な印象を残すファサード。増田友也の代表作の一つに数えられます。何度も試行錯誤を重ねた壮大な計画「京大会館」の縮小案として実現しました。
2階レベルの床が建物周りを囲みます。本来は道路を越え、本部・西部構内と繋がる予定でした。
建物裏側、出っ張りが凹みに見えてしまう呪い
プール客席も増田作品
④工学部8号館
事務局や生協などが入る工学部の中枢施設。生涯を鉄筋コンクリート建築に捧げた増田友也の情熱がほとばしります。濃い陰影が出る晴れた日がオススメ
⑤工学部校舎群
立ち並ぶシンプルな箱型校舎のうち、増田作品とハッキリ把握しているのは1号館と6号館のみ。ほかの棟も似たスタイルなので、全くの無関係ではないと思われます。
特に工学部電気総合館はTHE 増田友也!といったデザイン。
ほかにも凝った造形がみられます。
外装リニューアルと耐震補強により、外観が大きく変わった校舎が多いです。
⑥羽田記念館
吉田キャンパスの北西5km地点、連続するアーチが目に飛び込んできます。住宅街にぬっと現れるのは、東洋学研究の権威である羽田亨教授の自宅跡に建てられたため。西アジアに関する文献1万点を所蔵。講演会などに使われるほか、資料閲覧で館内に入ることもできるのだそう。別称は京都大学大学院文学研究科附属文化遺産学・人文知連携センター(長い!)
⑦その他
大阪府熊取町の京都大学複合原子力科学研究所も増田友也の設計。広島のモニュメント作品は別途記事にしています。
なお、京都大学の建物名称は当初と変わっているのが多く、混乱します。(例)工学部1号館→総合研究10号館。 散策の際、キャンパスマップは最新版ではなく、一番古い2004年版が良いかと。 キャンパスマップ(過去に掲載したファイル)-京都大学
※今回の記事は京都大学総合博物館企画展 「増田友也の建築世界──アーカイブズにみる思索の軌跡」および10+1の京都大学派の建築などを参考にしました