今回の徳島旅の目的はふたつ。ひとつは鳴門の増田友也18作品を自転車で巡ること。もうひとつは謎多き旧阿波町庁舎の訪問です。
“増田友也が設計した旧阿波町庁舎を2階建てに減築して再生”
キッカケはそんな内容の新聞記事。まず、存在自体を全く知らなかったうえに「減築」という二重の驚き。現在、新聞記事(徳島新聞?)は公開を終えているようで、増田友也×阿波町庁舎に関するネット情報がほぼ皆無なのも、興味をそそられる一因でした。
JR徳島駅から単線に揺られること1時間。阿波山川駅で下車、吉野川を渡った先に旧阿波町庁舎はあります。増田友也の最晩年、1979年の作品。
スリット、あみだ状の目地が刻まれたふくらみのある階段室はまさしく増田友也のそれ!鳴門市文化会館(1982)などと共通のデザインです。庇は新しく作り変えられていますが、柱は昔のままっぽい。
西側のサブエントランス側にはポツ窓も。こちらの庇はおそらく竣工当時のものです。
どのような経緯で減築および保存が実現したのかは、庁舎改修に関する2017年の阿波市議会議事録(PDF)が参考になりました。要点は以下の通り。
- 「著名な建築家、増田友也氏の設計になるもので、価値のある建物」と認識。「設計指導を受け建てられた」の記述も。
- 3階を減築して耐震性確保
- 階段室、窓などの意匠を残し、文化的な資産、観光資源として生かし活用していく
- 増田友也の建築物を研究する建築士から意見を聞いた
- 説明板や模型(改修前)の設置を検討
2014年のGoogleストリートビューでは3階(議事堂?)が存在した頃の姿が残っています。四周バルコニー付きで、一部スリットが入った屋根から光を落としていたっぽい。
2014年に阿波市役所本庁舎から阿波支所になり、耐震改修後の2020年4月「阿波市阿波地域交流センター」として再オープン。1階が運転免許センターと子供向けのプレイルーム、2階が中国農政局の事務所、多目的室などに使われています。
では、建物内部の特徴を見ていきます。
階段室。外観そのままのふくらみ。
!?
トップライトすんごい!
西側の階段室はイエロー!翌日に訪れた鳴門市老人福祉センター(1977)に少し簡素にしたトップライト装飾があり、増田友也の手法と確認。ただ、あちらはレッドバージョンのみでした。
踊り場を中心にやや「くの字」に階段が開くのも、鳴門市文化会館と似通っている点です。
ポツ窓は汚れ具合からして、以前使っていたものの再利用でしょうか。
増田友也の意匠は確かに残しつつ、その他の部分は使いやすいよう全面改修されていました。「説明板や模型」はまだ実現していないようだったので、これからに期待です。
西側サブエントランスの受付と床
南淡町庁舎、洲本市庁舎、尾道市庁舎は解体され、鳴門市庁舎は風前の灯。増田友也の庁舎で最後に残るのが、阿波町庁舎ということになります。
海(鳴門)の増田建築の次は、山(阿波)の増田建築へ。鳴門市と連動して増田建築の町徳島をPRする日が来ることを願っています。