右手に電球。左手にモーター。かつて電力会社の本社壁面を飾った女神像が、大阪西天満の宇治電ビルディングに残っています。
まずは建て替え前の旧・宇治電ビルディングから。長谷部鋭吉、竹腰健造が率いた長谷部竹腰建築事務所の設計で、1937年(昭和12年)に竣工。
関西電力の前身である宇治川電気の本社として建てられたため、冷暖房、給湯、厨房設備などいたるところに電気を用いたオール電化ビルでした。
テラコッタレリーフの女神像は、そのビルの正面両翼から街を見下ろしていました。長谷部鋭吉がデザイン。彫刻家の奥田勝がそこから原型を作り、泰山タイルで知られる泰山製陶所によって制作されました。
頭上の「雲」「稲妻」「河川」の文様からわかるように、当時は天の恵みで電気を起こした時代。宇治川に設けた宇治発電所が同社の主力でした。
現・宇治電ビルディングに建て替わったのは2014年のこと。宇治川電気が解散して70年以上が経過していましたが、ビル名称には宇治電が受け継がれました。
- 地上13階地下2階建て
- 建築主:関電不動産
- 設計:日本設計
- 施工:清水建設
シンボルだった電気の女神は、裏手のサブエントランス脇にひっそり。
右手に電球
左手にモーター
ややうつむき加減のお顔は、4~5階付近から地上を見下ろすのに最適な角度だったのでしょう。「雲」「稲妻」「河川」は残念ながら移設されませんでしたが、まわりの壁のタイルは旧ビルのものです。
保存品の展示コーナーがあるよ!と案内されたのでロビーへ(見学には一声かけましょう)
エレベーター表示板、ドアノブと錠箱、換気装置、コンセントなどが展示。外気取入口の文字は関西電力(関西配電)の「関」かと思いきや「開」。文字を押し込んで、後部の蓋を開ける構造になっていたといいます。
旧宇治電ビルの模型。屋上にも「宇治電」があったとは…。
もう一体の女神像がどこにいったかというと大阪歴史博物館。顔のみが寄贈されました。
開催中の「タイルとおおさか-日本における「タイル」名称統一100周年-」(2022年4月20日~6月27日)で展示されているので、近々会いに行ってきます。