日本郵政が有する郵便局は全国に2万4000以上あり、近年はその資産価値を活かして再開発する事例が増えてきました。
今後、特に注目されるのが大都市圏の中央郵便局。鉄道が郵便輸送を担っていた頃の名残で、現在もターミナル駅の駅前一等地に立地する場合が多いです。そこで、日本で人口100万を超える12の大都市にある中央もしくは駅前郵便局、そしてそれらの跡地再開発の現状を紹介したいと思います。
東京
日本郵政が初めて手がけた不動産事業が東京中央郵便局の再開発。東京駅に隣接する抜群の立地に高さ200m、延べ床面積21万㎡規模の超高層ビルを完成させました。モダニズム建築の名作と謳われた旧局舎の外観を残しています。商業フロアのブランドには「KITTE」を採用。いいネーミングだと思います。
大阪
近年、大阪駅周辺は目覚ましい変貌を遂げました。大阪ステーションシティ、グランフロント大阪の開業に阪急、阪神の両百貨店の超高層化。常にどこかにタワークレーンが立っている状態でした。
大阪中央郵便局跡地(西梅田スクエア)はJR大阪駅の西側にあり、再開発を待っている状態です。2009年頃に高さ187m、延べ床面積20万㎡超と具体化したのですが、その後の市況悪化によって凍結。ディズニーの劇場が入るなんて話もありました。
旧・大阪中央郵便局局舎(写真右下:2011年撮影)は東京中央郵便局と同じく吉田鉄郎による設計でこちらも評価の高いモダニズム建築でした。
名古屋
2017年4月に全面開業を迎えたJPタワー名古屋。オフィスを主用途として低層階に商業ゾーン「KITTE名古屋」を設けています。2000年以前はJRセントラルタワーズくらいしか目立つビルが無かった名駅前ですが現在は超高層林立状態。リニアが開通するとさらに利便性が高くなります。
かつての名古屋中央郵便局(名古屋駅前分室)局舎。2009年撮影
札幌
札幌中央郵便局はJR札幌駅東側の線路に隣接して立っています。開局時から何度か場所が変わっていて現在地に移転したのが1985年。庁舎もその際の新築です。
北海道庁の正面には三井不動産と協働した札幌三井JPビルディングがあります。
仙台
仙台では近接して2つの拠点があります。東北最高峰の仙台トラストタワーに近接して仙台中央郵便局。
そこから徒歩5分ほど北側に日本郵政グループ仙台ビルが立地します。以前はこちらが仙台中央郵便局でした。
埼玉
武蔵浦和駅前のそばにさいたま中央郵便局がありますが、ここだけは未訪問。いかにも中央郵便局といった印象の外観みたいです。また、さいたま新都心には首都圏エリアの一大拠点である日本郵政グループさいたまビルがあります。
横浜
370万都市の横浜の中央郵便局はその人口規模に対してかなり貧弱な外観ですが立地は横浜駅隣接と最強クラス。湾岸エリアの横浜神奈川郵便局に機能を集約していってるみたいです。
川崎
川崎駅から東方向に伸びるメーンストリートと第一京浜との交差点角に川崎中央郵便局はあります。1990年に川崎郵便局から改称された比較的新しい中央郵便局です。戦後すぐまでは駅近くに立っていました。
京都
京都駅隣接の京都中央郵便局も再開発が待たれる局舎です。低層部が商業施設、高層部が高級ホテル…そんな将来像が見えるようです。
神戸
東京、大阪に続く日本3番目の中央郵便局。阪神大震災で大きな被害を受けた局舎を改築して使用しています。JR元町駅とJR神戸駅の間にあって交差点に面しているのですが残り3角にあった建物(ファミリアホール/旧三菱銀行神戸支店、神戸貯金事務センター、ホテルシェレナ)は全てタワーマンションに建て替わりました。※予定含め
広島
オフィスエリアに立つ広島中央郵便局も資産価値は高いと思うのですが
再開発の本命と目されているのはJR広島駅隣接の広島東郵便局です。以前はこちらが広島中央郵便局を名乗っていました。敷地面積は2500m2くらいでしょうか。
博多
福岡中央郵便局は天神エリアにありますが…
大正時代には既に博多駅前の博多郵便局が地域統括拠点として機能していました(写真は2013年撮影)
そして、その博多郵便局を再開発し、2016年にKITTE博多とJRJP博多ビルが誕生しました。
ちなみに九州におけるエリア本部は日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険とも日本郵政グループ熊本ビルに置かれています。写真は熊本城天守閣からの撮影です。
東京、名古屋、博多の再開発に続くのは大阪、京都、横浜、広島あたりでしょうか。特に期待されるのが大阪中央郵便局跡地の梅田3丁目計画。当初通りの延べ床面積20万㎡超が実現すれば東京のJPタワーと同程度の大規模事業になります。
日本郵政は現在はオフィス、商業ビルのみの手がけていますが、いずれはマンション分野への参画も視野にいれているといいます。局舎再開発を中心とした不動産事業は今後さらに注目して見守っていく必要がありそうです。